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2016年5月15日日曜日

エージェントは競争相手か?



つまり、直接のクライアントを持つ翻訳者にとって、エージェントは競争相手か?
さらには、エージェントにとって、直接のクライアントを持つ翻訳者は競争相手か? 
という問いに対して。

フリーランスで仕事をしていますが、クライアントが直接のお客様の時もあれば、エージェントの時もあります。

結論から言うと、直接のお客様がいるからといって、エージェントのことをライバル、競争相手だとは思いませんし、エージェントから見ても、直接の顧客を持つフリーランスが競合であるべきだとも思いません。

選択肢が増えるということは市場にとって好ましいことですし、業界にとってもポジティブなことだと思います。

実を言うと、何年か前、直接の顧客を持ったり、ウェブサイトを持ったりしてそのことを告知することは、エージェントを敵に回すことになるのではないか、そんな心配をしたこともありました。

今はそのようなものではないのではないか、構図である必要はないし、そうではないんだな、と思うに至りました。

それは、案件によって、個人に適したプロジェクトと、エージェントに適したプロジェクトがある、と思うからです。

フリーランスになってしばらくは、エージェントからのお仕事がほとんどでした。

非常に大きなボリュームのものを大勢で手分けするというプロジェクトにも関わらせていただき、そのおかげで、大変勉強になりました。


そういった経験は、個人で終始対応するタイプの仕事では、まず得られません。

このように、エージェント経由のプロジェクトから翻訳者が得られるものは大きいものです。

では、個人、つまりフリーランスの依頼に適したプロジェクトには、どんなものがあるか。

まず、英語から日本語など、対象言語が単一で、量も小~中規模の場合は個人のほうが「取り回し」が小さくて済む分、コミュニケーションが単純化される。時間も労力もセーブできるので効率的だと言えると思います。

一方、エージェントへの依頼が適したプロジェクトは、個人ですべてまかなうことが不可能なもの、あるいはそれに向いていないものだと思います。

例えば、多言語化プロジェクトで、ボリュームが相当にある場合、言語をまたいだ統一感や統一性が求められます。

表記や表現などが統一されているかどうかは、翻訳のクオリティの良し悪しを左右する基本的な部分ですから。

専任のプロジェクトマネージャーがスタイルガイドをまとめたり、チェック作業を行う。それらを含めた一連のプロセスを一か所でまとめられるエージェントを利用するのが効果的だと思うのです。

また、ボリュームの大きな案件はどうか。個人で対応しきれるか。

これは納期に余裕があるのであれば、ひとりでも対応が可能だと思いますが、納期が悠々としている案件は少ない。つまり、量に対して納期がタイトなのであれば、手分けする必要が出てくるでしょう。

その場合、訳語や表現の統一など、品質管理が単独の翻訳者の場合に比べて、複雑になるので、その点に関しては注意が必要だと思いますが…。

では、納期は短く、量は多いので「それでは即エージェントに依頼!」かというと、残念ながら話はそれほど単純ではありません。

エージェントでも、対象言語に対応できるプロジェクトマネージャーを抱えていないところでは、たとえ多言語に対応しているエージェントであっても、日本語に対応できるプロジェクトマネージャーがいるとは限りません。

それなら、日本語を目標言語(アウトプットされる言語)にしている翻訳者でチームを組み、そのチームのなかでコーディネーターを決め、プロジェクトマネージメント、品質管理を行う方が賢明ではないか、と個人的には思います。

反対に、直接のクライアントの仕事であれば、中継点が少ないため、コミュニケーションの時間短縮が長所のひとつ。

その一方で、情報のやり取り、ファイルのやり取りやデータの保管など、その点におけるクライアントの不安材料を取り除く努力、エージェントが担っている責任を、直接自分が担うという認識を備えるなど、意識的な努力が必要になることも。

結局、直接のクライアントを持つ翻訳者にとって「エージェントは競争相手か?」

そして、エージェントにとって「直接のクライアントを持つ翻訳者は競争相手か?」

と考えてみましたが、私はエージェントとの関係は「競争相手」ではなく「パートナーシップ」だと思います。

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